- 引越し業者との契約後もキャンセルは可能ですが引越し2日前以降はキャンセル料がかかります
- 入居申込み後のキャンセルも可能ですが申込金が返金されない可能性があります
- 退去予告後のキャンセルは原則できないため注意しましょう
入念に準備を進めていた引越しでも、何かしらの事情でスケジュールの変更が必要になるケースもありますよね。そうした場合、引越しの予約はどのようにキャンセルすれば良いのでしょうか。この記事では入居申込み後や退去予告後の引越しのキャンセル可否について
引越し業者選びのポイントについては下記の記事でご紹介します。
引越しの予約キャンセル
キャンセル料が発生しない場合
引越し予約のキャンセル料は、多くの場合、引越し予定日の3日前までであれば発生しません。引越し業者の多くは、引越し業者と申込者(引越しをする人)の間で守るべき基本的なルールとして国土交通省の「標準引越運送約款」に則ってサービス運営を行っています。引越し業者は約款の第三条第七項の規定に基づき、見積書に記載した荷物の引越し予定日の3日前までに申込者に契約内容の変更の有無について確認する義務があります。この時点で引越しをキャンセルすると伝えれば、3日前に該当するため約款の第二十一条に基づいてキャンセル料は発生しません。また、引越し業者が事前の契約内容の変更有無の確認連絡を怠った場合、3日前を経過してキャンセルしてもキャンセル料は請求されないということも覚えておきましょう。
なお、前述のとおり3日前までのキャンセルや引越し業者の都合が原因の契約変更の場合はキャンセル料が発生しないのが原則ですが、引越しの予定に変更がある場合やより良い条件の引越し業者を見つけた場合は、なるべく早めにキャンセルを申し出るようにしましょう。引越し業者の都合を考慮して、キャンセルが確定次第早めに連絡するのがマナーです。
また、キャンセルと同様に、引越しを延期する場合も延期手数料が発生するため注意しましょう。キャンセル・延期、いずれも3日前までに引越し業者に伝えることがキャンセル料や延期手数料の発生を防ぐポイントです。
キャンセル料が発生する場合
国土交通省の「標準引越運送約款」第二十一条に基づき、キャンセル料が発生するのは引越しの「2日前」、「前日」、「当日」です。キャンセル料および延期手数料の額は以下のとおりです。
- 2日前:見積運賃等の20%以内
- 前日:見積運賃等の30%以内
- 当日:見積運賃等の50%以内
なお、引越し業者のなかには独自の約款を採用している場合もあるため、提示された約款は必ず確認しておきましょう。引越し予定日に近づくほどキャンセル料や手数料が高くなるので、しっかりとスケジュール管理をすることが重要です。やむを得ない事情で急遽キャンセルや延期をする場合は、引越し業者に相談して手数料の額を最小限に抑えてもらうなどの交渉をしてみるのも良いかもしれません。
そのほかの気になるポイント
下見を伴う見積り料
引越し業者が家に訪問して下見する形式の見積りを行った場合、キャンセル料に加えて訪問の際にかかった出張料などの経費を請求される可能性があります。たとえキャンセル料が発生しない時期のキャンセルであっても、下見の経費分だけはすでに発生した費用として請求されるケースもあるため注意が必要です。
ただし、標準引越運送約款では見積りに伴って下見をする際は、下見にかかる費用を依頼者に通知して許可を取るように定められています。そのため、基本的に想定より高い金額を請求される心配はありません。ただし前提として、引越し業者に見積りを依頼するときは、あらかじめその業者が標準引越運送約款に基づいた運営をしているか確認しておくのが安心でしょう。
利用済みのオプションサービス
不用品の回収やエアコンの取り外しなどのオプションサービスを既に利用している場合は、オプション料金を支払わなければなりません。標準引越運送約款において、引越しに附帯するサービスを提供した際は費用を請求することが規定されているからです。したがって、キャンセル料が発生しない期間内にキャンセルしたとしても、オプションサービスに関する費用は支払う必要があります。契約時点でダンボールやガムテープなどの梱包資材をもらって使用した場合、キャンセルするとそれら資材の費用を請求される場合もあるため注意しましょう。
引越し以外の専門業者
ピアノの運搬専門業者、ペット輸送の専門業者、車の輸送業者など、荷物の運搬を引越し業者以外に依頼している場合、キャンセルの規定は異なります。基本的に当日のキャンセルはキャンセル料が請求されます。何日前以降でキャンセル料が発生するかはサービスによって異なるため、申込み前に確認をしておきましょう。
台風などの悪天候や天災によるキャンセル
悪天候や天災など、引越し依頼主側にも業者側にも責任のない状況下では、キャンセル料を支払う必要がないケースがあります。標準引越運送約款によると、「地震、津波、洪水、暴風雨、地すべり、山崩れそのほかの天災」の場合、引越しが困難と業者が判断すれば引越しをキャンセル・延期をしても良いと定められています。しかし、どの程度で「引越しが困難な状況」と判断されるのかは、引越し業者や運ぶ荷物、搬入・搬出場所によって異なるため、一概には言えません。引越し予定日に台風などの悪天候が予想される場合は、どのような対応になるのか、事前に引越し業者と相談しておくと良いでしょう。悪天候の中での引越しでも、引越し業者は基本的になるべく荷物が濡れないための対策をしてくれます。引越し作業に支障のない天候であると判断されているにも関わらずキャンセルを申し出た場合は、依頼主都合のキャンセルとなり、キャンセル料を支払う必要があるとされているので注意しましょう。
雨の日の引越しについてはこちらの記事で詳しくご紹介します。
病気や事故、身内の不幸によるキャンセル
標準引越運送約款では「解約または受取日(引越し当日)の延期の原因が荷送人(依頼側)の責任によるもの」である場合にキャンセル料が発生するとされています。そのため、病気や事故、身内の不幸といったやむを得ない理由で引越しをキャンセルする場合でも、基本的には依頼主都合のキャンセルになるため、引越し予定日3日以内のキャンセルであれば通常通りのキャンセル料が発生します
引越しキャンセルに関するQ&A
すでに引越し業者からもらったダンボールはどうする?
標準引越運送約款では、梱包資材については特に記載されていません。そのため、引越しキャンセルの際のダンボールの扱いについては業者によって異なります。基本的には買い取りか、業者に返却というケースが多いようです。使用済みのダンボールは返却ができなかったり、返却の場合でもキャンセル料とは別途で返送料や手数料が請求されたり、直接の返却が必須と定められているケースもあります。そのため、引越し業者がどのような取り扱いをしているか、あらかじめホームページや規約、契約書といった書類を確認しておくことをおすすめします。別の引越し業者への変更が理由でキャンセルをする場合は、新しく契約した業者がダンボールを引き取ってくれたり、代理で返却してくれたりすることもありますので、そちらも引越し業者に確認してみると良いでしょう。
本人不在でも引越しは可能?
先述の通り、病気や事故、身内の不幸などやむを得ない理由でも基本的にはキャンセル料が発生します。それでは、自分自身が引越し作業に立ち会えない場合に、本人不在の状態でも業者に作業してもらうことは可能なのでしょうか。
原則は不可だが代理人による立ち会いが認められる場合もある。
依頼主不在で作業を行った場合、梱包していたはずの荷物が運ばれていない、作業中どさくさに紛れて第三者が侵入しても気付くことができないなどといった様々なトラブルが起きる可能性が考えられます。そのため引越し依頼主の立ち会いのない引越しは、業者にとってのリスクが非常に大きく、原則としては不可です。しかし場合によっては、業者と確約書を取り交わすことで、代理人の立ち会いによる作業を認めることもあるようです。
標準引越運送約款では、下記のような記載があり、引越し申込み者本人が委託した代理人による立ち会いが認められています。
“(荷受人が不在の場合の措置)荷受人が見積書に記載した引渡日に引渡先に不在のおそれのある場合には、あらかじめ荷送人に対し、荷受人に代わって荷物を受け取る者(以下、代理受取人という。)の氏名及び連絡先の申告を求めます。荷受人が見積書に記載した引渡日に不在であった場合には、当該代理受取人に対する荷物の引渡しをもって荷受人に対する引渡しとみなします。”
本人不在は、依頼主本人と引越し業者双方にリスクがあるためあまりオススメは出来ませんが、どうしてもやむを得ない場合の最終手段としてはひとつの方法かもしれません。
入居申込み後のキャンセル
そもそも仮押さえとは
入居申込書を提出して気になる物件を押さえておくことです。賃貸物件は原則として先着順のため、「借りるかわからないが、今のところ押さえておきたい」というようなことはできません。しかし、入居申込みをして審査を受けている間は物件を押さえておけるため、この状態を「仮押さえ」と呼んでいます。
なお、複数の不動産会社で異なる物件を仮押さえする行為はマナー違反に当たるため避けた方が良いでしょう。気になる物件を複数押さえておきたいのというのは誰しもが思うことですが、入居申込み後の審査中は物件の公開を停止するため、契約の機会を逃していることになります。従って、入居申込みの審査中にキャンセルすると不動産会社や大家さんに迷惑がかかります。また、なかには同じエリアに複数の物件を所有している大家さんも存在するため、キャンセルした物件と次に入居申込みが同じ大家さんだった場合、印象が悪くなり入居審査の通過に影響が出る可能性もあるかもしれません。
仮押さえに必要な費用
入居申込みの際、不動産会社によっては申込金が必要な場合があることを念頭に置いておきましょう。申込金は「この物件を借りたい」という意思表示として不動産会社に支払う一時金のことです。申込金は家賃1ヶ月分までが一般的ですが、なかには持ち合わせの金額で問題ないとする不動産会社も存在するため、一度相談してみることをおすすめします。
なお、宅地建物取引業法(宅建業法)で不動産会社はキャンセルに際して受領している申込金の返却を拒否することを禁じられています。従って、キャンセルした場合、申込金は原則として返却されますが、トラブルを防ぐためにもキャンセル時に返却してもらえるか確認しておきましょう。
申込金を支払う際は「預かり証」を発行してもらうのが重要です。預かり証を受け取ったら必ず会社印や発行日、金額に間違いがないか、そして「預かり金」と記載されているかを確認します。「手付金」と記載されている場合は返却してもらえないため、注意が必要です。なおキャンセルせずに契約成立した場合は、申込金は敷金や礼金などに充当されることも覚えておきましょう。
入居申込み後にキャンセルする場合
前述のとおり、仮押さえ後、すなわち入居申込み後でも原則としてキャンセル可能です。ただし、「重要事項説明」を受ける場合は申込金が返却されない可能性があるため注意しなければなりません。重要事項説明とは、宅地建物取引士の資格を有する担当者が申込者に対して書面を読み上げて、物件の状態や契約条件を詳しく伝える説明のことをいいます。契約書を交わしていなくてもこの説明を受けると契約の意思があるとみなされ、申込金を返金できない「手付金」として処理される可能性があります。そうなると申込金を返却してもらえないため、キャンセルをする場合は重要事項説明を受ける前になるべく早めに申し出ましょう。
やむを得ない理由で契約成立後にキャンセルすると解約扱いになります。この場合、通常の退去者と同等の対応になるため、契約直後の解約であっても初期費用や発生した家賃は返金されない可能性が高いでしょう。キャンセルする場合は、入居審査中の段階の重要事項説明を受ける前で、契約書にサインをする前に不動産会社に申し出ることが重要です。従って、仮押さえできる期間は入居審査が完了する2日~1週間程度と考えておきましょう。
退去予告後のキャンセル
退去予告とは
引越しをする際は、賃貸契約書に記載された期限までに部屋を出ていく旨を事前に伝える「退去予告」をしなければなりません。期限は物件によって異なりますが、多くの場合、退去日の1~2ヶ月前までとされています。電話や書類など、通知方法も賃貸借契約書にて確認しておきましょう。退去予告の期限よりも遅く通知をした場合、余分な家賃が発生して新居と二重家賃になり得るため注意が必要です。
なお、多くの場合、契約期間中の退去であっても違約金は発生しません。ただし、1年未満の退去に対して違約金の特約を設けている物件や、契約期間中家賃を払い続ける義務がある「定期借家契約」の物件の場合は、違約金の発生や途中退去が認められない可能性もあります。
退去予告後は原則としてキャンセルできない
一旦退去予告をしたら、貸主の同意がない限り原則としてキャンセル(撤回)できません。退去予告を受けた貸主は速やかに次の借主の募集をするからです。しかし、新規の応募者がいないなど、次の入居者が決まっていない場合は撤回できる可能性もあります。そのため、まずは貸主や管理会社、不動産会社に相談してみましょう。
退去予告のキャンセルが不可だった場合は、予告期間満了までに退去する必要があります。借主にやむを得ぬ事情があったとしても、貸主は借主に対して退去の請求だけでなく賃料相当額の使用損害金を請求する権利があるからです。トラブルを避けるためにも、速やかに退去しましょう。
転出届手続き後のキャンセル
転出届とは
引越しをする際には、住民票を引越し先に移すために役所への届け出が必要です。そのうち旧住所の管轄の役場で手続きをするのが転出届です。手続き期間は、引越し日の2週間前から可能で、引越し前に手続きをする必要があります。
転出届の取消
転出届を提出した後に引越しの予定がキャンセルになった場合、手続きをした役所で取消することができます。転出届の取消に特に期限はありませんが、取消をしないと住民票が転出届を提出する前の状態に戻りません。そのため、もし手続き後に引越しがキャンセルになった場合は忘れずに取消手続きを行いましょう。
転出届の取消に必要なもの
- 本人または世帯主の印鑑
- 転出証明書
- 本人確認書類
- 転出届を出した際に交付された証明書(国民健康保険被保険証、介護保険受給資格証明書等持っている人のみ)
- 個人番号カード(持っている人のみ)
- (代理人の場合)代理人の印鑑
まとめ
「好条件の引越し業者を他に見つけた」、「転勤が中止になった」など、引越しの予約をやむを得ずキャンセルしなければならない場合もあるでしょう。どのような理由であっても、キャンセル料の発生や引越し業者のスケジュールを考慮してキャンセルするとわかった時点で速やかに引越し業者に連絡することが重要です。引越しをせずに現時点で生活している物件に住み続ける場合は、退去予告を撤回できるか相談し、不動産会社の指示に従って適切な行動をとってください。