- 引越しでは、ガスコンロが購入したものなのか最初から備え付けられていたものなのかで扱い方が変わります
- ガスコンロを取り外す場合は、自力で行うか引越し業者に依頼するかの2つの方法があります
- 引越しに際してガスコンロを処分する場合は4つの方法があります
引越しの際、取り扱いに悩むもののなかに「ガスコンロ」があります。備え付けのものも購入したものも、一度取り付けしてしまうと動かすことはまずないでしょう。しかし、引越しの際に旧居へ置いていくのは問題ないのか、逆に新居へ持って行っても良いのか、悩んでしまう人は少なくありません。
今回は、引越しにおけるガスコンロの移設に関するパターンを4種類解説し、具体的な取り外し方や設置の仕方、処分する際の注意点に触れていきます。引越し直前になって慌てることがないように、本記事を参考に準備を進めていきましょう。
ガスの種類
ひと口にガスと言っても、一般家庭で使われているガスは2種類存在します。
- 都市ガス(天然ガス)
- プロパンガス(LPガス)
都市ガスは、地下に張り巡らされたガス管を通じて、ガス会社が管理するガスタンクから供給されるシステムです。都市ガスの性質として、産出されるガス田によって熱量が異なるという特性があり、火力に影響を与えます。日本で一般的な都市ガスは「13A」「12A」と呼ばれる種類のもので、この2つであれば市販されている一般的なガステーブルが使用可能です。
しかし、ごくまれに「6A」や「L1」などの上記2種類の規格とは異なる熱量を持ったガスを供給しているガス会社があります。この場合は「特殊なガス種」と呼ばれるものにあたり、ガスの種類に応じたガスコンロを使用しなければなりません。
これに対してプロパンガスは、建物ごとに取り付けられたガスボンベからガスを供給するタイプです。都市ガスと異なり全国で同じガスが使用されているため、旧居と新居がプロパンガスであればガスコンロの買い替えは必要ありません。ただし、都市ガスとの互換性がないため、旧居と新居でガスの種類が異なる場合はガスコンロの買い替えが必要になります。
2つのガスは、家の外周を見てガスボンベの有無を確認するほか、ガスのホースの色で一般的には判別できます。都市ガスはベージュか青色、プロパンガスはオレンジ色です。間違えると異常燃焼を起こす可能性もあるため、事前に確認しておいてください。
引越し時のガスコンロの移設に必要な作業
引越しの際、ガスコンロの状態によって必要な作業が異なります。具体的には以下の4パターンが考えられます。
- 引越し元のガスコンロが購入したもので、引越し先にガスコンロがない場合
- 引越し元のガスコンロが購入したもので、引越し先にガスコンロが備え付けられている場合
- 引越し元のガスコンロが備え付けのもので、引越し先にガスコンロがない場合
- 引越し元のガスコンロが備え付けのもので、引越し先にガスコンロが備え付けられている場合
それぞれのパターンによって必要な作業が異なります。自分がどのパターンに該当するのかを確認して、作業内容を整理しましょう。なお、今回は引越し元と引越し先のガスの種類は同じと仮定して解説します。
引越し元のガスコンロが購入したもので、引越し先にガスコンロがない場合
引越し元のガスコンロは自分で購入したものであり、かつ新居にガスコンロがない場合は新居に移設することができます。その際に必要な作業は次のとおりです。
【必要な作業】
- ガスコンロの掃除
- ガスコンロの取り外し
- ガスコンロの梱包
- ガスコンロの設置
注意したいのは、旧居と新居の元栓の種類です。元栓には、ソケットで取り付け可能なコンセント型と、ホースと接続口をバンドでつなぐホースエンド型の2種類があります。タイプが異なると元栓に接続できないため、引越し前に確認しておきましょう。
また、ガスコンロの設置に関しても、実際に新居で設置する場所の寸法が適合しているかなどを事前に確認しておかなければなりません。元栓の種類とガスコンロの寸法を確認して、適合する場合は移設の準備を進めましょう。
引越し元のガスコンロが購入したもので、引越し先にガスコンロが備え付けられている場合
引越し元でガスコンロを購入しているものの、引越し先にもガスコンロが備え付けられている場合は引越し元のガスコンロを処分しなければなりません。引越し先が戸建て住宅であれば事情が違いますが、賃貸物件の場合は引越し先にあるガスコンロを勝手に交換できないことがほとんどです。
そのため、自分で購入したガスコンロを処分しなければなりません。処分方法は、捨てる以外にも選択肢があります。具体的には、「ガスコンロの処分の仕方」で詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
【必要な作業】
- ガスコンロの掃除
- ガスコンロの取り外し
- ガスコンロの処分
引越し元のガスコンロが備え付けのもので、引越し先にガスコンロがない場合
引越し元のガスコンロが備え付けのもので、引越し先にガスコンロがない場合は新居用にガスコンロを購入しなければなりません。引越し元のガスコンロが備え付けの場合、このガスコンロの持ち主は物件の大家さんや管理会社です。借主が勝手に持ち出すことは盗難にあたるため、新居用にガスコンロを購入する必要があります。
ただし、引越し元のガスコンロをきれいに掃除するのを忘れてはいけません。原状回復が求められるのはもちろんですが、大家さんや管理会社、新しい住人の手間をかけさせないためにもきれいにしてから退去するようにしましょう。
【必要な作業】
- ガスコンロの掃除
- ガスコンロの購入
引越し元のガスコンロが備え付けのもので、引越し先にガスコンロが備え付けられている場合
引越し元・引越し先の両方にガスコンロが備え付けられている場合、退去前にガスコンロを掃除する以外にやることはありません。どちらも住居の設備にあたるもので、持ち主は大家さん、もしくは管理会社です。原状回復もそうですが、きれいにして退去することで、貸主が退去後に支払うクリーニング代を節約でき、敷金が返金される可能性が高くなります。
今まで旧居でお世話になったという感謝の気持ちも込めて、きちんと掃除して退去するようにしましょう。
【必要な作業】
- ガスコンロの掃除
ガスコンロの掃除の仕方
ガスコンロで掃除が難しいものと言えば、油汚れです。換気扇も同様に、油汚れが激しい可能性があります。どちらも重曹を使って掃除できるため、同時に掃除してしまうのがおすすめです。重曹は100円ショップやドラッグストアで簡単に入手できます。
やり方は、キッチンペーパーなどに水に溶かした重曹を付けて、汚れた場所に貼りつけ、10分ほど放置するだけです。ほかにも、液体クレンザーとブラシ、油汚れ用洗剤で掃除するなど、さまざまな方法があります。自分のやりやすい方法で掃除しましょう。最後にはしっかりと拭き上げるのを忘れないでください。
ガスコンロの取り外し方
引越しにともなってガスコンロを取り外す方法は、2つ考えられます。
- 自分で取り外す場合
- 業者に依頼する場合
いずれの場合でも、気を付けるべき点があるため、予備知識を持っておきましょう。それぞれの取り外し方と注意点を解説します。
なお、ガスコンロには、据え置きタイプとビルトインタイプの2種類があります。ビルトインタイプのコンロは構造が複雑で、取り外すには資格が必要な調理設備です。本章で解説しているガスコンロは、とくに断り書きがない限り据え置きタイプとして話を進めます。
自分で取り外す場合
自分で取り外す場合、以下の手順に従ってガスコンロを取り外します。
- ガスコンロのスイッチが入っていないことを確認
- ガス栓を閉める
- 元栓からホースを抜く
元栓を締めてからホースを抜けば作業は完了です。この時、ガスコンロのスイッチが入っていないことを確認してください。スイッチが入っていると、何かの拍子に点火が作動してしまい、火災につながる可能性があります。乾電池で作動するガスコンロは、作業前に乾電池を抜いておくと良いでしょう。
また、ホースを抜く際は、室内の換気をしてください。ホースに残ったガスが多少漏れ出てくるため、火花や静電気で発火する可能性もあるためです。集合住宅などで火災報知器を作動させないためにも、必ず換気をしながら取り外しを行うことを忘れてはいけません。
業者に依頼する場合
自分で取り外せる自信がない、ビルトインタイプで自分では取り外せないという場合は、業者に依頼しましょう。旧居周辺のガス会社に依頼することで、安全に取り外しを行ってくれます。また、引越し業者のオプションとしてガスコンロの移設が用意されているところもあります。引越しの見積もりと一緒に依頼すると、別々で申し込む手間が省けるためおすすめです。
もし業者に依頼して取り外してもらう場合は、早めの予約が重要です。とくに引越しの繁忙期は引越し業者同様、ガス会社もなかなか希望する日時に予約ができなくなることがあります。引越しまでのスケジュールに余裕がある場合でも、引越しが決まった段階で日程調整しておくことをおすすめします。
ガスコンロの梱包の仕方
ガスコンロの梱包は、グリルや五徳などの外れてしまうものと、ガスコンロ本体を別々に梱包する必要があります。移送中にグリルのガラス面が破損したり、本体が故障したりしてしまうのを避けるためです。分解できる部分はすべて分解し、別々に梱包するようにしましょう。
グリルや五徳、排気口カバーなどは個別に緩衝材で包み、本体と別の箱に梱包します。本体も同様に緩衝材などで包み、梱包してください。
ダンボールの枚数が足りないなど、何かしらの問題があって別々に梱包できないときは、ガラス面に切ったダンボールを貼りつけるなどし、五徳や排気口カバーを養生テープなどで固定して本体と一緒に緩衝材で包む方法があります。分解せずに梱包する場合は、とにかく分解できる部分が外れないようにしっかりと固定することが重要です。
ガスコンロの設置の仕方
ガスコンロの設置方法は、取り外し同様、自分で行う方法と業者に依頼する方法の2種類があります。自分で設置しても難しい作業ではありませんが、自信がなかったり、要領がわかっていなかったりする場合には業者に依頼するようにしましょう。設置方法を間違えると、火災などの危険につながる場合もあります。
自分で設置する場合
自分で設置する場合は、以下の手順で行います。
【手順】
- キッチンシンクの一段下がった場所にガスコンロを置く
- ガス栓にホースをしっかりと接続する
- 換気をしながら正常に着火するかを確認する
ガスコンロの設置場所は、多くの物件ではシンクに一段下がった場所があるはずなので、そこに設置しましょう。このとき、ガスコンロとガス栓・壁との距離を一定空けておくようにしてください。
ガス栓との距離が近すぎるとホースがねじれたまま接続してしまうことになるため、ホースの損傷が起こるかもしれません。また、壁にピッタリ設置してしまうと、壁などに火が燃え移ったり、壁に埋め込まれた木材が炭化して劣化したりする可能性もあります。適切な距離感を保ちましょう。どうしても距離が保てない場合は、防熱版などのアイテムをガスコンロと壁面の間に差し込むと解決できます。
設置後の着火点検の際には、必ず換気を行ってください。万が一、設置方法を間違っていた場合、ガスが漏れる可能性があります。ホースの設置具合が不十分だと外れてしまう可能性もあるため、必ず換気をした状態で点火チェックを行いましょう。
ガスの開栓がまだの場合は、この作業は必要ありませんが、ガスコンロが故障していないかどうかを確かめる意味も含めて、ガス開通後には試運転をしてください。自分で設置する場合には、最大限安全に配慮して設置作業、試運転を行うようにし、少しでも不安がある場合には業者に依頼するようにしましょう。
業者に依頼する場合
ガス会社や引越し業者に、ガスコンロの設置を依頼することもできます。引越し業者であれば引越し当日にセッティングしてもらえますが、ガス会社の場合は事前に新居周辺のガス会社の予約を取る必要があります。取り外しと同じく、繁忙期には希望しているスケジュールでガス会社の予約が取れないことも少なくありません。新居への引越し日が決まったら、すぐに連絡しておくのがおすすめです。
ガス会社に依頼すると、もしガス栓とホースの口径が違っていたり、ガスの種類の関係でガスコンロが使えなかったりする場合に部品交換や改造で対応してもらえることがあります。別途料金は発生しますが、引き続き同じガスコンロを使用したい場合にはおすすめです。ただし、すべてのガスコンロに対応できるわけではない点に注意が必要です。
ガスコンロの処分の仕方
ガスコンロの処分方法は以下のとおりです。
- 粗大ごみとして処分する
- 不用品回収業者に処分してもらう
- リサイクルショップに売る
- 引越し元に置いていく
採用する処分方法によっては処分費用が発生することがあります。事前に確認しておきましょう。
粗大ごみとして処分する
粗大ごみとして処分する場合、まずは自治体がガスコンロを粗大ごみで捨てられるか、規定を確認しなければなりません。粗大ごみとして処分できない場合は、次章以降の方法で処分してください。
粗大ごみとして捨てられるものは、一般的には縦・横・高さのいずれかが30cm以上のものを指します。事前予約が必要なため、自治体の「粗大ごみ回収センター」などで申し込みしましょう。その際、有料粗大ごみ処理券(シール)の枚数や収集日を伝えられるため、必ずメモを残してください。
有料粗大ごみ処理券は、コンビニやスーパーで購入できます。購入後は収集日に、購入したシールを貼りつけて所定の場所に出すだけです。シールの枚数が不足していたり、収取場所を間違えたりすると、再度予約からやり直しになってしまいます。日頃、燃えるごみなどを出している通常の収集場所ではないこともあるため、必ず確認してください。
不用品回収業者に処分してもらう
不用品回収業者に処分してもらう方法もあります。即日回収が可能なため、急な引越しでも対応してもらえるメリットがあります。有料で自治体の回収よりも高額ではあるものの、ガスコンロ以外の不用品も同時に回収してもらえるため、不用品が多い人、急ぎの引越しが決まって時間がない人はぜひ活用したいサービスです。
注意したいのは、依頼しようと思っている業者が「一般廃棄物収集運搬業」の許認可を得ているかどうかです。通常、不用品回収業者を名乗り事業を行うためには、この許認可が必要になります。しかし、なかには無許可で営業している業者も存在し、不適切処理や不法投棄と言ったトラブルのもとになることがしばしばあります。
確認方法は業者のWebサイトに「一般廃棄物収集運搬業」の許可番号があるかどうかです。また、あまりにも料金が安い場合も要注意です。見積もりでは格安であったはずが、実際に請求された際にはオプションと称して高額請求されることもあります。
リサイクルショップに売る
ガスコンロをはじめ、引越しの荷造りをしていると「まだ使えるけれども私はもういらない」というものもあるでしょう。その場合はリサイクルショップで買い取ってもらうと良いです。
状態の良いものや年式の新しいガスコンロであれば、比較的高額で買い取ってもらえることも珍しくありません。複数のリサイクルショップで見積もりをしてもらったうえで、もっとも高い見積もり額を提示したところで売ると、引越し資金の足しにできます。
ただし、リサイクルショップはすべてを買い取ってくれるわけではない点にも注意が必要です。値段が付けられなかったり、古すぎて買い取れなかったりするものは、結果的に持ち帰らなければなりません。また、リサイクルショップで処分を依頼すると、逆に処分料を取られるケースもあります。万が一売れなかった場合の対処法も考えておきましょう。
引越し元に置いていく
賃貸借契約の内容や大家さん・管理会社への確認は必要ですが、引越し元に置いていくこともできるかもしれません。
原則として、賃貸借契約のガイドラインには、退去の際に原状回復が求められます。原状回復とは、入居当初から設置してあった備品を除き、退去時には入居時と同様の状態に戻すことを言います。ガスコンロも例外ではなく、勝手に置いていくと残置物となってしまい、大家さんや管理会社が処分に困ってしまうことがあるのです。
ただし、大家さんや管理会社によっては、事前に確認さえとればガスコンロを残置物として置いて行っても良いという場合もあります。置いて退去した以上、所有権は大家さん・管理会社に移りますが、残置物として残す場合も掃除は必須です。
ガスコンロを購入する際の注意点
新居で使用するガスコンロを購入する場合、次の購入方法があります。
- ガス会社
- ホームセンター
- 家電量販店
- ネット通販サイト
上記のうち、購入に際して注意が必要なのはガス会社以外から購入する方法です。先述のとおり、ガスには2種類あり、判別できないこともあります。間違えて購入してしまっては意味がありません。また、格安のガスコンロの場合、そもそもの性能に難があることも珍しくありません。料金は高いものの、ガスの事情に詳しいガス会社で購入するのが信頼できます。
引越し時のガスの手続き
ここまでガスコンロに注目して解説してきましたが、引越しに際してガスの閉栓と開栓の手続きも必要になります。それぞれの申込み方法や当日に行うことを解説します。
閉栓の手続き方法
閉栓の手続きは、旧居で契約しているガス会社に連絡をし、閉栓日時を決定します。電話やインターネットから申込み可能です。定刻になるとガスの供給が止まります。
ガスの閉栓をしないまま退去すると、閉栓するまでの費用を払い続けなければならなくなります。また、閉栓しないことでガス漏れや火災の原因になることもあるため、計画的に閉栓手続きを進めましょう。
開栓の手続き方法
開栓の手続きも基本的には閉栓と同様です。ただし、ガスの開栓は水道・電気と異なり契約者もしくは同居人の立ち会いが必要になります。点検員に訪問してもらう日時は、誰かが立ち会える状況で設定しましょう。
開栓後は点検員がガス漏れなどを確認し、異常がなければ作業終了です。その際、書類への署名押印が求められるため、筆記用具や印鑑(認印)を手元に用意しておいてください。
まとめ
ガスコンロの移設はそれほど難しい作業ではないため、自分で行うことができます。しかし、輸送の際に梱包方法などに気を付けなければ、ガスコンロの故障につながる可能性もあります。新居でも同じガスコンロが使えるとは限らないため、事前の確認を徹底するようにしてください。