目次
- 引越し当日の掃除は新居と旧居の両方で行いますが引越し当日はあまり時間がないので前日までにできる箇所は終わらせておきましょう
- 旧居では「原状回復義務」があり経年劣化を除いて綺麗な状態にして明け渡す必要があります
- 新居では入居前のキズや汚れの状態を確認しておくためにも掃除をしましょう
- 掃除は天井から壁そのあと床といった具合に上から順番に行います
- 掃除する際は必ず換気をしながら行いましょう
- 新居では燻煙式殺虫剤を炊くなどして害虫駆除を行うと害虫被害を減らせます
賃貸では住民が退居する度にクリーニングを行うため、引越しの際に掃除する必要はないと思われるかもしれません。しかし、旧居では原状回復義務、新居では入居前のキズや汚れを把握するために、引越しの際の掃除は必須事項です。ただし、引越し当日は入念に掃除する時間の確保は難しいため、前日までにある程度終わらせておく必要があります。
今回は、引越し当日の掃除を楽にするために、当日までに行う旧居の掃除や当日行う新居での掃除のポイントを紹介。スムーズに掃除を済ませられるように全体の流れとポイントを把握しておきましょう。
引越し当日の流れ
引越し当日は下記のような流れで行動します。
■引越し当日の流れ(旧居)
- 引越し料金を払う
- 旧居の掃除
- ライフラインの停止
- 搬出作業の立ち会い
- 鍵の返却などの諸手続
- 新居へ移動
■引越し当日の流れ(新居)
- 近所への挨拶
- 新居の掃除
- ライフラインの開通
- 搬入作業の手伝い
- 荷解き
多少前後する部分はありますが、基本的には上記のように引越し当日はやることがたくさんあります。そのため、旧居の掃除は引越し当日までにできるところを済ませておきましょう。
入居までの間に新居に入れるのであれば、新居の掃除を行っておくのも、当日の負荷を減らすことができるのでおすすめです.
引越しする際に住居を掃除する理由
引越しの際には旧居・新居の掃除を行いますが、その理由は「ただきれいにする」だけではありません。旧居の場合は「原状回復義務」があるため。新居の場合は、空き室期間に溜まったホコリをきれいにする、また家の状態をチェックするために掃除を行います。
旧居を掃除する理由
先にも少し触れていますが、旧居を掃除する大きな理由の一つに「原状回復義務」があります。原状回復義務とは、国土交通省のガイドラインに基づき、常識の範囲を超えて物件を傷めた、または汚した際に借りた人が修繕費用を負担しなければいけない義務のことを言います。
経年劣化による汚れや破損は対象外ですが、それ以外の汚れについてはできるだけきれいな状態にしたうえで明け渡す必要があるのです。掃除をせずに汚れたままにしてしまうと、クリーニング代が多額になることもあるので、汚れが目立つ部分や掃除できる部分は必ず掃除をしておきましょう。
新居を掃除する理由
新居を掃除する理由は2つあります。1つ目は「空室期間に溜まった埃」です。空室期間が長いと、クリーニングしてから時間が経っていることもあり、埃が溜まっている可能性が高いでしょう。2つめの理由は、「入居前の物件のキズやトラブルを把握すること」です。
賃貸の場合は退居する際に先にもふれた「原状回復義務」が発生します。入居前のキズやトラブルまでカウントされてしまうと、クリーニング代や修繕費が高くなるので、入居時の掃除でこれらを把握して大家さんや管理会社に連絡しておきましょう。そうすることで、余計なクリーニング代・修繕費を請求される恐れを回避できます。
引越しの掃除に役立つ道具一覧
引越しの掃除を行う際には、下記の道具をそろえておくと便利です。
項目 | 道具 |
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全般 |
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キッチン |
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浴室 |
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トイレ |
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引越し当日までにおこなう旧居の掃除方法
先ほど紹介した「当日の流れ」でも触れているように、当日にも旧居の掃除は行います。ただし、引越し当日はやることが案外多いため、時間をかけて入念に掃除する暇はありません。そのため、できる範囲で当日までに掃除を行っておくことをおすすめします。
天井や壁
汚れや埃は高いところから下に落ちるので、まず天井・壁から掃除を行います。天井や床はスプレータイプの洗剤を使用して全体的な拭き掃除から始めます。クロスについた細かい汚れは歯ブラシでこすると落としやすいでしょう。天井や壁の掃除まで行うと、不動産会社や大家さんが部屋の状態を確認する際に好印象を残せます。
■必要な道具
床に使用できるスプレータイプの洗剤、ラップ、雑巾
床
床は全体的に拭き掃除を行いましょう。汚れが酷い箇所には、床に使用しても良いスプレータイプの洗剤をかけ、ラップを被せて数分間放置すると汚れを落としやすくなります。
■必要な道具
床に使用できるスプレータイプの洗剤、ラップ、雑巾
窓
窓の掃除は基本的に水拭きで行います。水に濡らした雑巾を固く絞り、上から順に「コ」の字を書くように拭きましょう。汚れが取れにくい箇所は、メラミンスポンジや重曹水、セスキ炭酸ソーダ水の活用もおすすめです。
窓の掃除で忘れてはいけないのがサッシです。見落としやすい部分ですが、「日常の不適切な手入れ」とみなされやすいので必ず掃除しておきましょう。サッシの掃除は小さく切ったタオルで割り箸やピンセットを包んだものを使用するときれいに汚れが取れます。
■必要な道具
バケツ、雑巾、メラミンスポンジ、重曹水、セスキ炭酸ソーダ、小さく切ったタオル、割り箸、ピンセット
キッチン
キッチンも入念に拭き上げて、きれいにしておきます。ただし、ガスコンロや換気扇にはしつこい油汚れがついている場合があります。拭いても落ちない場合は、重曹水を含ませたキッチンペーパーを汚れた部分にかけて10分ほど放置しておくと落ちやすくなります。
ほかにも、大きめのビニール袋を用意して、五徳やバーナーキャップ、換気扇カバーを入れ、スプレータイプの洗剤を吹きかけて10~15分ほど放置すると汚れが落ちやすくなります。シンクの水垢についてはメラミンスポンジで簡単に落とせるので試してみてください。
■必要な道具
重曹水、キッチンペーパー、ビニール袋、スプレータイプの洗剤、スポンジ、ブラシ、メラミンスポンジ
浴室
浴室は浴槽を洗ったのちに壁や床を洗い、最後に排水溝を掃除します。カビが目立つ場合はカビ用洗剤を使用すると、掃除を素早く終わらせられます。カビ用洗剤で落ちない場合は塩素系漂白剤の使用も検討しましょう。その場合、ニオイ対策と目の保護を行うためにマスクや保護メガネの着用を忘れないようにしましょう。
■必要な道具
ビニール手袋、スポンジ、床用ブラシ、お風呂用洗剤、カビ用洗剤、塩素系漂白剤、マスク、保護メガネ
トイレ
トイレはまず「換気扇→照明→壁」の上から順番に中性洗剤を使用して掃除していきます。その後、「手洗いボウル→便器→床」の順に掃除を行います。手洗いボウルはカルキによる汚れを落とすために、酸性洗剤を用いるのがおすすめです。
便器の掃除は縁裏まで掃除できるブラシを使用すると良いでしょう。便器の種類によって使用できる洗剤が異なるので、注意書きをよく読み、適した洗剤を使用してください。黒ずみが酷い場合は重曹水を吹きかけてしばらく放置した後にこするか、酸性洗剤やクレンザーを使用すると落としやすくなります。床も同様に、スプレータイプの洗剤を用いて掃除します。
■必要な道具
雑巾、中性洗剤、酸性洗剤、ブラシ、スプレータイプの洗剤、ビニール手袋、便器の種類にあった洗剤
洗面所
水を良く流す洗面台も意外と汚れています。洗面ボウルはまずメラミンスポンジでこすって汚れを落としましょう。ただしメラミンスポンジは素材によっては適さない場合もあるため、注意して使用しましょう。それでも落ちない場合は、湿らせたスポンジに中性洗剤を付けて再度こすってみます。しつこい汚れがある場合はクリームクレンザーを使って研磨すると良いでしょう。鏡は水拭きののち、から拭きをすればきれいになります。水拭きでおちない場合は、丸めた新聞紙でこすったり、クエン酸水を活用したりしてみましょう。
■必要な道具
メラミンスポンジ、中性洗剤、クリームクレンザー、雑巾、新聞紙、クエン酸水
引越し当日におこなう旧居の掃除方法
引越し当日までに掃除すれば当日の掃除はしなくても良いのでは?と思われるかもしれませんが、冷蔵庫や洗濯機などの家具・家電を搬出すると新たに埃が出てきます。これらの掃除も意外と時間がかかります。引越し当日はただでさえ時間が取れないので、軽い拭き掃除で終わるように前日までにできる場所は掃除を済ませておきましょう。
引越し当日の掃除は、引越し業者の搬出作業の邪魔にならないように注意が必要です。また、搬出作業が終わると同時に掃除も終えられれば、新居への移動もスムーズに行えます。当日の掃除でもごみが出るので、ごみ袋は必須です。当日発生したごみは新居へ持っていってごみ回収日まで保管しておくか、旧居の管理会社もしくは大家さんに処理方法を相談してみましょう。
引越し当日に行う新居の掃除方法
次に引越し当日に行う新居の掃除方法について解説していきます。前述した「掃除する理由」でも触れていますが、旧居の場合は、「自分たちが付けてしまった汚れを落とす」のが目的であるのに対して、新居では「汚れを落としつつ、キズやトラブルなど新居の現状を把握する」ことが目的です。
原状回復義務により、入居以前のキズや汚れのクリーニング代・修繕費用を請求されないように、新居に目立つキズや汚れがある場合は、入居時に管理会社、もしくは大家さんに連絡の上で写真に撮るなどして退居の日まで証拠を残しておきましょう。
天井や壁
旧居と同じく新居でも天井や壁から掃除をスタートします。理由も同じく、汚れや埃は上から下に落ちていくからです。全体的に拭き掃除を行い、汚れがひどい箇所はスプレータイプ洗剤を使用して歯ブラシでこすってみましょう。汚れが落ちにくい場合は、洗剤を吹きかけてラップをかけてしばらく放置したのちに拭き取る、もしくは歯ブラシでこすると落ちやすいでしょう。手が届きにくい場合は、フローリングワイパーを使用するときれいに掃除できます。
■必要な道具
床に使用できるスプレータイプの洗剤、ラップ、雑巾、フローリングワイパー
床
天井と床の掃除が終わったら、次に床掃除を行います。床掃除もフローリングワイパーできれいにできますが、時間がある場合は水拭きしておく方がよりきれいにできるでしょう。汚れが目立つ箇所はスプレータイプの洗剤を使用して掃除するのがおすすめですが、使用する洗剤によってはフローリングのワックスが剥がれてしまうので注意が必要です。
■必要な道具
床に使用できるスプレータイプの洗剤、ラップ、雑巾、フローリングワイパー
窓
窓の掃除は新聞紙で水拭きとから拭きをするだけでもきれいになりますが、気になるようであれば専用のクリーナーを使用しましょう。また新居でも忘れずにカーテンレールやサッシの埃を掃除しましょう。小さく切ったタオルを巻いた割り箸やピンセットを使えばきれいに埃を取れます。
■必要な道具
新聞紙、小さく切ったタオル、割り箸、ピンセット
キッチン
キッチンでチェックする場所はシンク、コンロ、換気扇です。シンクに水垢が付いている場合は、メラミンスポンジで簡単に落とせます。ただ前述したとおり、メラミンスポンジは素材によっては使用を避けたほうが良いので、事前に調べてから使用しましょう。コンロは固く絞った雑巾で埃を拭きましょう。換気扇は使用する前に埃が溜まっていないか確認しながら掃除します。掃除の際は雑巾でも良いですが、キッチンペーパーを活用するのもおすすめです。余った分は新生活でも使用できます。
掃除が終わったコンロの横、下、キッチン下のスペースには汚れ防止シートを貼っておくと新生活スタート後の掃除が楽になります。また換気扇は使用前にフィルターを設置することで、面倒な油汚れの掃除の負担を軽減できます。
■必要な道具
雑巾、メラミンスポンジ、キッチンペーパー、汚れ防止シート、換気扇フィルター
浴室
お風呂の掃除では浴槽や浴室全体を見渡して、カビやヒビが入っている箇所がないかをまず確認しましょう。もしヒビが入っている場合は、管理会社もしくは大家さんに連絡して修繕してもらいます。
カビやヒビがない場合は、浴室全体を軽く水を流して掃除しましょう。汚れやカビが目立つ場合は、専用の洗剤を使用して落としておきます。浴室は、浴槽の側面内部にカビの原因となる汚れが蓄積している可能性が高いので、入居時に業者に掃除を依頼するのも良いでしょう。
■必要な道具
スポンジ、浴室専用洗剤
トイレ
埃が溜まっている場合は換気扇、照明、壁の順に掃除していきます。壁まで掃除が終わったら、便座やトイレットペーパーホルダー、床などの細かい部分をトイレ用ウェットシートで綺麗に拭き上げます。匂いが気になる場合は、ブラシと洗剤で掃除しておきます。便器の種類によっては使用できない洗剤もあるので、使用できる洗剤を事前に確認しておきましょう。
また、トイレが流れるかどうかもこのときに確認しておきます。もし流れない場合は管理会社、もしくは大家さんに連絡して速やかに対応してもらいましょう。
■必要な道具
ブラシ、トイレ用ウェットシート、専用洗剤
引越し当日の掃除に関するポイント
引越し当日の掃除では下記のポイントをおさえておきましょう。
- 換気しながら掃除を行う
- 入居前に害虫駆除を行う
換気しながら掃除を行う
新築やリフォーム物件の場合は塗料のにおいが充満している可能性があります。空室期間が長い物件の場合は、下水やカビ、埃のにおいが気になる場合もあるでしょう。そのため、入居時の掃除の際には、換気をして空気も一緒にきれいにするのがおすすめです。
また、換気は窓だけではありません。棚や押し入れ、クローゼットなどの扉も開けておくと、中にこもっていたにおいや湿気を取り除けます。
入居前に害虫駆除を行う
家具を運び入れる前に燻煙式殺虫剤で害虫駆除を行うと、家のなかで虫に遭遇する確率を減らせるので安心です。特に新居が1階の場合は、少しの隙間やエアコンの室外機から虫が侵入しやすいので要注意。また、新居が1階ではない場合でも、1階にコンビニや飲食店がある場合は虫が入り込みやすい傾向にあるので、入居時に対策しておきましょう。
燻煙式殺虫剤を使用する際は、窓や換気口を締め切り、火災報知器が反応しないようにカバーをしておきます。使用後は換気を行い、虫の死骸を掃除機などで吸い取ります。火災報知器のカバーも忘れずに取り外しておきましょう。さらに、虫の侵入を防ぐために、侵入経路となりやすい玄関や窓辺に害虫が好まないハーブを置くなどの対策もおすすめです。
見逃しがちなのが、引越しに使用したダンボールです。ダンボールは保温性があるうえに害虫の餌となる埃も付きやすく、さらに隠れ家としての役目も果たすなど、害虫にとってこれほど都合の良いものはありません。害虫の温床となる前に、引越し後のダンボールは速やかに処分しておきましょう。
引越しの掃除に関するよくある質問
ここでは引越しの掃除において、よく聞かれる質問について説明します。
退去時に旧居の掃除は必要なの?
必ずではありませんが、退居時に旧居の掃除はしておいた方が良いでしょう。なぜなら先にも解説した「原状回復義務」があるからです。ただ2020年4月1日の賃貸借契約に関する民法ルール変更により、原状回復の範囲が「生活しはじめてから生じた損傷」と明確化されました。つまり、通常消耗や経年変化については原状回復義務から外れるということです。通常消耗や経年変化はたとえば以下のようなものです。
■通常消耗・経年変化・原状回復の例
通常消耗・経年変化の例 | 原状回復の例 |
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入居者が負担しなければいけないのは、上記以外を除く原状回復義務が生じる部分です。そのため、基本的には原状回復の対象となる範囲のみの掃除で大丈夫です。
入居時に新居の掃除は必要なの?
入居時にも新居の掃除はしておく方が良いでしょう。きれいな状態で新生活をスタートする、という心理的な面ももちろんありますが、入居時の物件の状態を把握するためにも入居時の掃除は欠かせません。これまで何度も触れてきましたが、賃貸の退居時には「原状回復義務」があります。原状回復義務は、「生活をはじめてから生じた損傷」が対象ですが、築0年の物件でも無い限り、入居時にはすでに多数のキズがあることが予想されます。
それらのキズと、入居後のキズの区別がつかない場合、退居時に原状回復義務により余分なクリーニング代や修繕費を請求されることになります。納得のいかない請求を避けるためにも、入居時には掃除をしながらキズや汚れの状態を確認しておきましょう。もし目立つキズや汚れがある場合は、写真に撮るなどして管理会社もしくは大家さんに連絡することをおすすめします。
まとめ
引越し当日に掃除する時間はほとんどありません。引越し当日は大型家具・家電を搬出した箇所をさっと拭く程度で終わらせられるように、前日までにできる限り終わらせておくのがポイントです。
特に旧居では「原状回復義務」によるクリーニング代や修繕費を安くすませるためにも、経年劣化を除いて、できるだけきれいに掃除しておくことをおすすめします。